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「エヴォリューション」

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「エコール」の時はブログやってたっけ?ホームページだったっけ……?とちょっと懐かしく思って検索したのですが、もうブログやってたみたいですね。十年前か……ていうか、ブログに移って十年か……(ホームページのほうは96年開始だぜ?二十年だぜ?)

そんな、「エコール」の監督の新作映画「エヴォリューション」が日本でようやく公開されたので、たまったスタンプもあることですし観にいきましたよ。ところで、「EVOLUTION」という原題で思い出すのは、X-FILES でおなじみのモルダーが、宇宙から来たエイリアンのケツにフケ取りシャンプーを大量注入して地球を救う、みんな大好きぼんくら映画の「エボリューション」を思い出すのですが、こちらの邦題は「エヴォリューション」です。


ねたばれ……まあ、30行ほどで。

-☆-
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29!

-☆-

あらすじは上記のリンクを見てもらうとして、実際に観た身としては、パンフレットに載っていたインタヴュー、「製作資金を集めるのに苦労しました。主に「どういう映画かわからない」という問題で(大意)」とあるように、まあなんというか、ストーリはあらすじ以上のものを提示できない感じです。

冒頭、とてもとても綺麗な海中の映像から始まるのですが(ナショナルジオグラフィクスみたい)、そこから後の展開は「こうなんだからとりあえずおいておこう」みたいにして乗り切らないと楽しめません。なぜこの島には女性と少年しかいないのか?なぜこの住人たちは殺風景な部屋に暮らしているのか?少年が女性からもらっている食べ物は?薬と思しきものは??

それはそういうものなのです。

そう割り切ると、主人公役の少年の目線を借りるような、その体験を後追い(と言っても映画なのでほぼ同時だ)と言う感じになり、まあいろいろと疑問はある世界ではあるけれど、そこで暮らしている少年に移入できる…と思います。

そうすればもうこの映画にノッた感じ。

徐々に異質さは少年を飲み込んでいき、舞台も島からなぞの病院に移っていきます。その病院も、最初のうちは殺風景ではありつつも、まあああいう病院、昔あったよね、みたいな雰囲気から、壁も床も水で濡れている、ありえない雰囲気に包まれていきます。

病院でのシーンは、この合間合間にちょっとグロいシーンが挟まるので、よけい気味が悪いです。さらに、この監督の絵作りの特徴と思う、露出をアンダー目にしてハイライトを強調して、結果ラインライトだけ…みたいな絵になるので、病院でのシーンは本当に迫るものがありますよ。

それ以外でも、野外では引きのシーンを多用して、その風景の美しさを入れていたり、かと思うと少年のアップや、被写界深度の浅い絵を出してきて、本当に綺麗な映像で魅入られます。個人的に一番すごい、と思ったのは、ストレッチャーで運ばれていく少年の目を主に移しているシーン。廊下の蛍光灯が少年の瞳に写り、それが小さくなると同時にシーン全体が暗くなり、また少年の瞳に光が入ると徐々にあかるくなっていく……。このシーンはホントすごかった。綺麗…というよりは、言葉で表しにくい何かですよ。

そして、映像の美しさもありますが、台詞も音楽もほとんど少ないのがまた特徴的でした。とはいえ、音が少ないのではなく、「沈黙 -サイレンス-」のように、環境音でメリハリをつけている感じ。実際、撮影時の音ではなく、同じ場所で音響監督が録音しなおした音を使っているようです。この音声も、怒濤の爆ぜる音を始めとして、懐胎した少年の腹を切り裂く音とか、そういうほうでも効果を発揮しているので、それはそれで怖いんですが。


-☆-

まあいろいろと、ちょっと圧倒された映画だったのです。内容も把握しづらい感じだったのですが、帰ってきてお風呂に浸かったり、お酒を飲んだりしていろいろ考えた結論が、これは「オネショタ映画」なのでは?と言う残念なあたり。自分の得意フィールドに引き寄せすぎだろう。

とは言うものの、やはりあの助けてくれた看護婦・ステラが、どこで少年にほだされたのかなあ、と考えると、少年が書いていた絵(それはすべて島には無いものです)の珍しさとかよりも、初めて病院に入院したときの、シャワーを浴びようとしているところ。ここで、一人で浴びれる、と拒む少年に対してステラは「一緒に入ると楽しいわよ」と言っているあたり。このあたりではないでしょうか!……まあ、そのシャワーシーン自体は場面変わっちゃうのでないのですが、この「行間」を創造するにもう!かんぺきに!オネショタ!

あとはステラが(たぶん)少年は海中で呼吸できない、と言うのを知らずに海中を疾走して、あわや殺してしまうところだった、と言うあたり。人工呼吸の仕方もおかしかったですが、その後息を吹き返した少年をみて泣くところも、なんだか「泣く」という行為を初めて知った存在、みたいな感じで、あーこれはもうほだされます。ほだされますよー、とな。


失礼。少々興奮いたしまして。失礼。

-☆-

同時上映は「Nectar」という短編映画。こちらは比較的わかりやすい映画だったのですが、「ソフトポルノか!」というくらいにちょっと性的でして。いや、それがモチーフになっているのでしょうがないと言えばしょうがないのですが。
そしてこちらの映画に出てきた、あの集合住宅。あれ実在してるのかなあ。この建物が「よく探してきたなあ」というくらいにぴったりで、すばらしいのですよ。あの家の正体が知りたいところです。

-☆-

と言うわけで、十年ぶりの新作は「エコール」よりつかみどころの無い、そしてじんわりと怖い作品でした。うーむ。どうやって〆ればいいのかもわからない、不可思議な映画でしたよ。

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